……なんだ、それ。

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 ――暫く、私の心は虚ろだった。怒りや悲しみを通り越して、虚無になっていた。今から思えば、きっと防衛本能が働いたのかなと。何より大切な両親の死に正面から向き合えるほど、当時の私は強く……いや、今も強くはないけど。  だけど――ある日、そんな私の目を覚ますような衝撃が襲った。両親の命を奪った例の夫婦――なんと、そいつら二人が無罪判決を受けたとのこと。理由は、責任能力の有無――生来、精神に障害を抱えていたこの夫婦に責任能力は認められず、従って従来の刑を適用するわけにはいかなかったとのことで。そして、それを知った私は――  ……なんだ、それ。障害があるから、無罪? そんなに軽いのか、私の両親の命は。……ふうん、そっか。それなら―― 「――待っててね、お父さん、お母さん。私が、必ず二人の無念を晴らすから」
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