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「……えっと、それはいったい……」
「……うん、ちょっと暑くって」
思いも寄らない私の姿に唖然としていたが、ほどなくさっと身体ごと背中を向け尋ねる芳月先生。そんな彼の姿に、少し可笑しくなってしまう。私が勝手にこんな格好で出てきただけなんだし、別に気を遣わなくて良いのに。……それとも、少しは照れてくれてるのかな?
「……その、暑いなら冷房をつけるから……早く、服を着なさい」
「……うん、分かった。でも、冷房はいらないかな。普通に寒いし」
そんな、らしくもない……いや、この言い方も可笑しいけど――ともあれ、らしくもない先生のような言い方に、またも少し可笑しくなってしまう。
……まあ、私が言えた義理でもないんだけどね。こんな短いやり取りの中で、思っ切り矛盾したこと言ってるんだし。
……いや、でもやっぱり暑いかな? とりわけ、顔が火照るように熱い。ほんとに冷房いるかも……いや、止そう。それだと、先生が寒いだろうし。
……ほんと、自分でも思う。何してんだろって。ほんと、自分でも思う。……それでも、今日の……あの昼休みの、あの言葉がどうしても頭から離れなくて。
『――ごめん、坂上さん。君の気持ちは本当に有り難いし、本当に嬉しい。だけど……僕には、好きな人がいるんだ』
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