2人が本棚に入れています
本棚に追加
紗月の使う机は後方の端っこ。トイレが近くにある。
「あそこの隙間は」
秀哉はトイレの隣に空洞があるのを見つけた。紗月には当然のことらしい。
「物置。階段の下になってるから」
「脚立とかを収めてるけど。あまり意識してないよね」
何者かが隠れるなら、物置だろう。二人は恐る恐る近づき、中へ入る。キャンパスもあるけれど、脚立が広げて置かれていた。湿ったような息苦しさを感じる。
「普通は閉じて、立てかけるだろ」
秀哉は拡大鏡のライトで周囲を照らす。
「天井。開いてるじゃん」
紗月が発見したように驚く。天井へ入る場所が、そのまま開いていた。
「もしかして」
秀哉は脚立から上り、天井の中を調べる。定期的にまかれる殺虫剤の匂いなのか、鼻にきつい。
「続いてる。階段の下で繋がってるぜ、ジムと」
やはり大木が怪しい。
「でも。なぜ。そんなに恨まれることはしてない」
紗月には心当たりもないようだ。絵の具を一個だけ盗むにしては大袈裟だ。
密室の謎は解けた。天井への板が取り外されたのは、悪意も感じられる。
「これは、あの刑事さんにも教えよう」
「きゃっ!」
紗月の悲鳴とともに、後ろから追い被さるトレーニング姿。
「何を!」
脚立の上から相手へ飛び掛かろうとする秀哉。誰かが脚立を揺らせて、バランスを取るのがやっとだ。
「誰だ」
下を見た。髪を振り乱して必死な形相の澄玲がいた。トレーニング姿だ。スポーツジムで着替えてきたのだろう。それで、天井から伝ってきたようだ。
「邪魔しないで」
澄玲は手にしたビニール袋を、秀哉の顔へ振り回すと、脚立から降りられないようにした。
「グルだな」
思い切り相手へ足蹴りして飛び降りた。女性だから、と遠慮する場合ではない。
「この女がどうなっても良いのか」
大木の声だ。紗月を襲ったのは大木だろう。紗月の腕を後ろへ捻り、右手に木槌を持って、紗月の頭を狙っている。
これは動けない。のんびりしすぎて先を越されてしまったのだ。大丈夫か大学生迷探偵コンビは。
最初のコメントを投稿しよう!