恨みの黒髪

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その日から、名取先生の周辺では異変が相次いだ。 先ず、何食わぬ顔で2人の葬儀に参列した名取先生。 しかし、彼が焼香をしようとした瞬間、なんと異様に焼香が燃え盛ったのである。 更に、精進落としの場でも……なんとかかっていたBGMに、すすり泣く女性の――しかも、美紅ちゃんにそっくりな声が混じり始めたのだ。 何より極めつけは、火葬の際。 美紅ちゃんの骨に何故か金属片が混じっており、それが不意に爆ぜ、骨を拾おうとした名取先生の右目を直撃したのである。 この件で、名取先生は右目を失明した。 美紅ちゃんと江田君の祟りだろうと確信する教え子や保護者たち。 けれど、名取先生の不幸はこれだけでは終わらなかった。 なんと、奥様と娘さんを相次いで事故や難病で亡くされてしまったのである。 娘さんは急性の白血病だったらしいが――若かった為か、進行が恐ろしいほどに早く、直ぐに手の施しようが無くなってしまったらしい。 ちなみに……そんな、入院していた娘さんは、亡くなる寸前まで、夜になると床を指さし、下からずぶ濡れの男女がやって来ると言っていたそうだ。 奥さんの方も、毎晩、ずぶ濡れの若い男女が地中から姿を表しては足を引っ張り、自分を地面に引きずり込もうとして来ると怯え、最期には不眠症になり――それが原因で交通事故に遭ってしまっていたらしい。 妻子を(うしな)い、消沈する名取先生。
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