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僕が売られたのは森の奥にひっそりと佇む屋敷だった。
その屋敷は誰も来ないような森の中にあるというのに、塀や松で敷地内が見えないように目隠しされている。
「さあ、着いたぞ。降りて屋敷の人間を呼んでこい」
御者はぶっきらぼうに僕に声を掛ける。
僕は荷台に積まれた屋敷宛の荷物を落とさないよう、細心の注意を払いながらそこから降りた。
僕は屋敷の呼び鈴を鳴らす。
すると、中から一人の若い女性の使用人が姿を現した。
「どちら様でしょうか」
彼女は訝しげに僕に問う。
「僕は今日からお世話になるセンリと申します。あと、荷物も一緒に届いています・・・」
使用人は僕の後ろに視線を向け、御者が荷物を解いているのを確認すると、御者の元へ向かう。
「すぐに他の者を遣わしますので、少しお待ち頂けますか」
「分かりやした」
そして、その使用人は屋敷の裏の方へ向かったかと思うと中年の男を連れて戻ってきた。
彼女は二人に何かを話すと僕の方へ戻ってきた。
「それではセンリさん、これから案内しますのでこちらへどうぞ」
彼女は僕を屋敷の中へ連れて行った。
まず僕が案内されたのはこれから自室となる部屋だった。
その部屋は階段を上がってすぐのところにある部屋で、とても使用人のためとは思えないほど豪華な部屋だ。
おそらくこの部屋は家人の誰かが使っていた部屋なのだろう。
そこに置かれている家具や調度品も立派な物ばかりだ。
僕が荷物を置いて部屋を見回していると、案内人の使用人が口を開いた。
「自己紹介が遅れましたね、私は紫苑と申します。ここでメイド長を務めています」
「よろしくお願いします。それで・・・、なぜ僕はこんなに良い部屋を自室に使えるのでしょうか」
「この屋敷にはミチルお嬢様しか住んでおりませんので部屋が余っているのです。お嬢様もお部屋から出ることがありませんので、他のお部屋は我々使用人が使って良いと旦那様からお赦しを頂いているのです」
「そう言うことですか・・・。でも、なぜお嬢様はここにお一人なのですか?」
「それは、お嬢様が呪われているからです」
「えっと、どういうことなのでしょうか」
「お嬢様の一族には百年に一度、髪が金色で、赤色の瞳をもつ『禍罪の子』が生まれる呪いがかけられています。そして、生まれてくる子供にはパニック発作を起こすと亡くなり、世界に災いをもたらすという呪いが掛かっています。そのため、呪いの子は5歳までにこうして人里離れた場所に移すのです。ご家族は街の中にあるお屋敷で生活していらっしゃいます」
「そうですか・・・」
僕はそんな呪いが存在するとは思えず、その話を聞いて馬鹿馬鹿しいとさえ感じていた。
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