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……。
とにかく、電気を付けると黒い天井のそれは消えていました。
部屋を暗くすることに抵抗を覚えてしまったので、その日私は部屋の電気を付けっぱなしで寝ることにしました。
ですが、小さい頃から暗い部屋で寝てきたので、明るいままでは全く寝られなくて。
アイマスクの類いも持っていなかったので、仕方なく、腕を目に覆い被せるように乗せてから眠りにつきました。
明日も仕事なので早く寝なくては。
数分後にはウトウトと意識が遠退き始めたのですが、唐突にぴちょん、と眼球に異物感が一瞬だけ湧いたんです。
例えるならば、両目同時に目薬をさしたような。
おかしくないですか? 目は閉じていたのに、目薬をさされた感覚だなんて。
だからまたびっくりしちゃって。
また勢いよく上半身をベッドから起こしながら、目を開いたんですけど。
両目とも見えなくなっちゃったんです。
視界が真っ黒。
瞬く間に私、パニックになっちゃって、大慌てでさっきまで触ってたスマホをまた手にとって、親に電話を掛けようとしました。
幸いにもスマホは音声アシスタント機能をオンにしてたので、声だけで親に電話出来たんですけど。それだけはよかったです。
両親は私の慌てように、夜中だというのに急いで来てくれました。
そして、私を見た途端、ひっと母の引き攣った声が聞こえました。
見えない。見えない。
それだけを泣きながら伝えると、父は、恐る恐るといった声音で一言
「お前の目、真っ黒だ」
って。
朝になってからすぐに病院に行ったんですけど、原因は分からないって言われました。
ただ、こういう人間を見たことがある、と。
画像は見られなかったので口頭で説明してもらったのですが、世界には、眼球にタトゥーを入れる物好きが居るらしいんです。
私の眼球は、全体的――虹彩や瞳孔にも黒いインクを入れているように見える、と言われたんです。
なんで私がこんな目に遭わなければならなかったんでしょうか。
寝る前にスマホをしていたから?
でも、そんなの、誰だってしてますよね?
試しに真っ暗な部屋の中でスマホをしてみてください。あれはすぐに出ます。
なのになんで私だけがこんな事にならなくちゃいけなかったんでしょうか。
電気を付けても無駄です。あれは見ています。
運が悪かったのでしょうね、多分。もう、受け入れるしかないと思っています。
だから、早く、
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