タータンチェックのスカート

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タータンチェックのスカート

 石川県庁に程近い、石川県立金沢西高等学校に入学した僕はサッカー部に所属した。僕の背は然程高くなくサッカーチームでも補欠選手で一際目立つタイプでは無かった。 「きゃーー!雨月(うげつ)くーーん!」  然し乍ら自分で言うのも烏滸(おこ)がましいが中学校時代から一定数の女子生徒に好かれ高等学校に進学してすぐ自分のファンクラブが出来た事を知った。 (僕の何処が良いんだ)  鏡の中の自分に問い掛けながら毎朝髭を剃る、僕の名前は雨月 蔵之介(うげつくらのすけ)16歳、1年A組の05番だ。 「きゃーー!蔵之介くーーん!」  体育の授業の長距離走、部活動では先輩が蹴り損ねたボールを拾いながらグラウンドを行き来するだけで視線が集まった。 「こっち向いてーーー!」  愛想よく手を振ると甲高い声が響き渡った。 「きゃーー!」  女子生徒達はサッカー部主将やエースストライカーなど見栄えの良い先輩に声を掛けるなど恐れ多くそれは(はばか)れた。そこで何処か間の抜けた僕に黄色い声が集まる、ただそれだけの事だと思った。 (ん?)  ある日の事、その群れから離れて座るひとりの女子生徒が目に付いた。物憂げな表情で窓のサッシに片肘を突き此方を見下ろしていた。 (今時、あの髪型の子もいるんだ)  3階の三つ編み、無口な彼女。いつしか僕はその姿が窓辺に見えないと気落ちする様になった。 (ええーと、ここだよな)  3階の窓は南向きでその教室を探した。向かって右から4番目で校舎の中央辺り、時間割表を見るとその姿が消える時間と一致した。 (月曜日の4限目は音楽室)  僕の体育の授業と重なった。 (ここがあの人の教室かぁ)  思わず鼻から息を吸ったが自分にも身に覚えのある男性特有の体臭に(むせ)返った。
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