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二人、分かたれて
だが、次の瞬間──
ドンドンドンッ、と強く玄関が叩かれた。すぐさま外から鍵が差し込まれ、扉が開かれた。
制服姿の二人の警官が部屋に侵入してくる。雛子の遺体を見て顔をしかめ、俺たちのもとへ駆け寄ってくる。
「大丈夫!? けがしてない!? すぐに救急車を呼ぶからね!」
ああ、終わってしまった。抗うことも出来ず、俺の全身は弛緩した。
茉優は俺を強い眼で見てから立ち上がり、風呂場に隠れていた猫を引きずり出した。それを横目に、年配の警官が言った。
「きみは日置文也くんだね。もう大丈夫。怖いことしないよ。ご両親がとても心配している。一緒におうちに帰ろう」
別の警官が、茉優の前に跪いて言った。
「きみは青木心子ちゃんだね。ああ良かった。安心して。おじさんたちと一緒に帰ろう」
俺や茉優にとって、実家が帰るべき場所とは到底思えなかった。このアパートこそ生きる場所なのに、彼らはそんな事情も酌まず、喜んでいた。
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