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「コロー」  これでもか、というように頬ずりをする。  モシャモシャとした毛が愛苦しい。  コロも「キュンキュン」と嬉しそうな声を上げながら、頬を押し付けてくる。 「会いたかったよー」  涙で顔がぐしゃぐしゃになる。 「良かったな」  潤のやさしい声がした。 「うん……お爺ちゃんには?会えたの?」 「今、そこにいるよ」 「えっ?」  潤の視線の先を見るが、美代には何も見えない。 「ははは」  潤は笑って 「本当に会いたいって思ってる人にしか見えないからね」  と言って、夜空を見上げた。  美代も、夜空に目を向ける。  都会育ちの美代には見たことのないような星空が広がっている。  その真ん中に、ひと際輝く、無数の星の川……。 「あれが、天の川……」  美代は、その流れに吸い込まれるような心地よさを感じながら、いっぱいに空気を吸い込み、目を瞑る。そのままゆっくりと息を吐く。  何度か繰り返すうちに、フワフワと空間を漂っているように身体が軽くなる。 (きっとコロは、あの川の流れに乗って、私に会いに来てくれたんだ……)  それなら…… (私もこのまま、あの川のほとりまで行ってみたい……)  空中に身体を委ねているような気持ちよさの中、誰かに呼ばれた気がした。  はっとして目を開ける。 「お客様」  今度ははっきり聞こえた。送迎バスの運転手だった。 「そろそろ、出発のお時間ですが、どうなさいますか?」 「あっ、ちょっと待って下さい」  現実に引き戻された美代は、隣に座っているはずの潤を見ようとした。が、 「あれ?」  そこに、潤もコロの姿もなかった。
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