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 あくる朝。  信じられない報せが美代の耳を打った。 「美代!」  出勤してきたばかりの美代の元に、香奈が血相を変えて駆け寄ってきた。  香奈は、数少ない同期の一人で、親友でもある。 「どうしたの?香奈」 「村川くんが亡くなったって!」 「えっ?」 (村川くんって……潤くん?)  いつも下の名前で呼んでいたから、一瞬、誰のことか分からなかった。 「嘘でしょ?」  訊き返す声が大きく響く。オフィス内の社員の目が、2人に向けられる。  香奈は、口をギュッと結んだまま目を瞑り、首を振った。 「え、なに?いつ?どういうこと?」  パニックになる美代に、 「事故だって。一昨日、車にはねられたって……」 「一昨日?」 (おむすび山で天の川を見た日だ……)  あの夜、潤は『先に帰る』とのメッセージだけを残し、姿を消したのだった。 (じゃあ、あの後……だから、既読にならなかったんだ……) 「美代、大丈夫?」  香奈が窺うように見る。が、頭が真っ白で言葉が出ない。 「ちょっと話そ」  と、休憩室に誘ってくれた。  香奈が買ってくれた温かい紅茶を飲みながら、一昨日の話をした。  黙って聞いていた香奈だったが、聞き終えるや、 「それ、おかしいよ」  眉を顰める。 「おかしい、って?」 「だって、事故に遭ったのは、一昨日の朝だよ」 「え?……一昨日の夜、じゃなくて?」 「ううん、朝」 「え、でも私、一昨日は……」 「だから、おかしいんだって」  そのまま二人は黙り込んでしまった。 (朝、事故に遭った潤と、私は一緒に電車に乗ってY町に行ったの?夜、おむすび山で、コロも一緒に天の川を見たの?) 「美代、もしかして、見えないはずのものを見た、とか?」  冗談なのに真面目な顔の香奈に、 「朝、っていうのは、間違いないの?」  もう一度訊いた。  香奈はゆっくりと頷いてから、 「双子の兄弟とか、いないよね?」 「お姉さんがひとりいるだけだよ」  美代はその日、仕事をする気になれず、早退を許可してもらった。
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