外伝そのサン

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外伝そのサン

 その後虎の姿を見た者はこの街では誰もいなかった。連続放火も途絶えた。噂とともに消えていった。消えたものは次第に忘れ去られていく。人々の記憶から。人々の認識から。都合よく、都合が良いように。忘れておしまい、終わりである。一つの物語にも満たないで、満ちないで、未満で終わる。誰に語られることもなく、な。  その日も夜がまた来ようとしていた。夜が始まろうとしていた。夜の時間だ。やれやれ、ようやくだぜ。昼間長すぎ。太陽ばかりじゃ、くたびれちまうよ。  高いところから落ちるようにダイブし、そして足場を蹴って飛んだ。今日もこの街で何かを探すために。
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