2 意識

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 ふと視界に入った草木に手を伸ばす。 「これはーー食べれられないな」  大賢者の住む森には手付かずの自然が残され、珍しい動植物が生息する。それらはセミラの暇つぶしに持って来いの対象となり、図鑑で名前や生態を調べて日記に記すのが楽しいのだ。 「おお、これは煎じれば薬になるのか!」  平時は金色の鎧を纏わず、鍛錬用の装備を身に付けている。そのうえで何冊もの図鑑を携えるセミラの体力たるや恐ろしい。  熊や狼などは本能で嗅ぎ分け、彼女を襲うことはなかった。 ■ 「団長、おはようございます!」  訓練所に着くと気持ちの良い挨拶で迎えられる。セミラは1人、1人目を合わせて言葉を返す。  金獅子と呼ばれ畏怖の念を抱かれることも多いが、微笑めば年頃の印象となる。 「団長、可愛いよな」 「うん、うん、黙ってれば良家のお嬢様みたいだ」  などと、はしゃぐ団員も多い。セミラはそんな声を素通りして執務室へ向かう。  各所から送られてくる書面に目を通すのも彼女の仕事だ。 「祭りの警備、畑の収穫の手伝い、はては夫婦喧嘩の仲裁か〜。平和なのはいいですけど、騎士団は便利屋じゃないってのじゃないっての」  共に書面チェックする副団長の嘆きにセミラは首を横に振る。 「市民の手足になるのが騎士団だ。困っているなら助けてやらねばならない」 「だからと言って、夫婦喧嘩の仲裁をしなきゃいけないなんて限度が超えてませんか? あ、団長のところはどうなんです?」 「どう、とは?」 「とぼけないで下さいよ。あんな男と一緒に暮らすなんて神経がすり減って、無くなっちまうでしょ?」
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