2 意識

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 騎士団長と大賢者の結婚が愛し合った末の結び方だとは誰も思っていない。  特に関係者は破談を願ってさえおり、女王陛下が目指す友好的な関係を築くなど夢のまた夢であるのがーー現実。 「女王陛下が極められたことだ、仕方がないだろう。私からの辞退はない」  セミラは定型文で応じる。  どうせ伝えても誤解は解けない、それどころか曲解されるかもしれず、ミトラスとの暮らしが思ったより快適である節は黙っておく。 「ミトラス側からはあるって意味ですか? まぁ、奴には色々と噂がありますからね」  小指をクイクイッと曲げ、副団長が悪そうに笑う。 「団長と違って、あちらさんは色恋を好むみたいですしねぇ。なんでも惚れ薬を作って陛下に飲ませようとしているとか、いないとか?」 「なんだと! そうか、陛下にその薬を盛れば私と結婚しなくて済む!」  そういえば、セミラは思い出す。  自分達が結婚しなくてもよくなる魔術があるのか尋ねた際、ミトラスは煮え切らない態度を取っていたじゃないか。 「なんて姑息な真似を。許せない!」 「万が一、女王陛下がミトラスを好きになっちまったら、騎士団は解散させられます」  ここぞとばかりに煽る副団長。 「聡明な陛下ならば薬に影響されるとは考えにくい。私が怒りを覚えるのは女王陛下へ危害をくわえようとしていることだ!」  頭を抱えるセミラ。これは単なる噂話として切り捨てるには悪質で、見過ごせない。  女王ヘリオトープと大賢者ミトラスの組み合わせは可能性が全くない訳じゃないからだ。 「今すぐ陛下にお伝えしたいが、証拠は? 何か証拠はあるのか?」
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