3 祭り

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 私的な時間を子供達と遊んで過ごすセミラは、仮装をすることに抵抗がない。  夫婦で祭りに出たいと陛下へ相談すれば、助力を得られるのも確信していた。 「これは研究の妨害では? 僕は忙しいのです」  ミトラスが指輪を翳す。 「いいや、任務だ」  セミラは勝ち誇った顔する。なにも知略を巡らすのは大賢者だけではないと。  ハーブティーをひとくち含んで笑みを深めようとしたが、傾げた。 「……前の方が美味しかった」 「文句があるならご自分で淹れて下さい!」 「そうカリカリするな。ハーブティーを飲んで心を落ち着かせるといい」  ちっ、ミトラスは舌打ち。それから顎に指を添えて考え始めた。  この仕草をみ、セミラも反撃に備える。気位が高い賢者が大人しく引き下がるとは到底思えない。  視線を書斎へ滑らせる。なんとしても例の薬の効能を確かめねばならないのだ。 「分かりました。その任務、引き受けましょう」  少し経って、ミトラスがやけに芝居がかった声音で伝えてくる。 「おお、そうか!」 「ただし条件があります」  すかさず人差し指を立て、にっこり微笑む。三日月型に細められた瞳の奥は仄暗く、真意を深く沈めている。 「二つ返事で快く出来ないものかね」 「貴女こそ、陛下を巻き込んで何を企んでいるのやら」 「企み? 貴殿に後ろめたさがあるからこそ、そう感じるのでは? 探られて痛くない腹なら堂々としていればいいだろう」  セミラは顎を上げ、条件の提示を催促する。  かしこいものと綴りーー賢者、それも相手は大賢者。ミトラスなら交渉の場において無理難題を突き付けず、飲まざる得ない条件を選ぶに違いない。  
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