3 祭り

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 突然、前屈みになり唸るので飲料をこぼしそうになる。セミラは咄嗟に加減を伺い覗き込む。  と、精巧に出来た猪の顔面にミトラスは弾かれたよう仰け反った。 「被り物は取って召し上がって下さいね、はい、どうぞ」 「……ひとつしかないが?」  注意されなくとも被ったままじゃ飲み食いは出来ない。猪の面を外すと艷やかな金髪が現れ、ミトラスは一瞬言葉を失う。 「っ、痛っ」 「おい、さっきから大丈夫か? 何処か悪いのか?」 「……あなたこそ、頭が悪いんじゃないですか? もしくは察しが悪過ぎる」  せっかく心配したのにこんな返し方をされて、セミラは構わずストローを含む。  口内にいかにもな甘さが広がっていくのと同時、どうしてか苦みも覚える。 「あの、ひとりで全部飲まないで下さいよ?」 「は? 賢者殿も飲まないのでは?」 「恋人や夫婦は分け合って飲むそうですよ」  寄越せと手を出してくるミトラス。セミラは彼とカップを見比べ、なかなか渡せない。 「私が口をつけたものだぞ? 不衛生だろ?」 「貴女、歯磨きしてないんですか?」 「してる!」 「それに騎士団では回し飲みなど日常的なのでは?」 「それはそうだが……」  どうもミトラス相手だと緊張してしまう、本音を奥歯で噛み砕く。既に半分飲んでしまったカップを乱暴に押し付けた。
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