3 祭り

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 セミラは汗で張り付く髪を剥がし、整える傍らでミトラスを盗み見る。  同居はしているものの、2人は飲み物に限らず何かを分け合った試しはない。  セミラは自分が口にしたものに手をつけられ、ほんの少しだけだがドキドキしてしまう。 (いや、ドキドキっていっても、また文句を言われたりしないかという意味だ)  心へ言い聞かせる風にセミラは手を当てた。 「ふむ、美味しいですね」 「美味しいのか?」 「おや、貴女の口には合わなかった? 僕は分かりやすい甘さと香りが好きですが?」 「褒めてるのか、貶しているのか判断がつかない言い方だな。私は不味くはないが、すっきりした味の方が好ましい」 「例えば?」 「そうだなぁーー賢者殿が淹れてくれたハーブティーが美味しかった」  セミラはあの味を振り返り、目を瞑る。 「森でハーブを採集してお茶にしているんだが、なかなか上手くいかなくて。だが、試行錯誤が楽しいよ」 「ど、どうせ貴女のことです。ハーブではなく雑草が混じっているのでは?」 「あはは、確かに」  屈強な者達を束ね、豪傑な人物として知られる騎士団長セミラ。金獅子とも呼ばれる彼女が森でハーブ摘みをしているとは、ミトラスの切れ長な瞳が裂けんばかりに開く。 「やはり賢者殿の森は豊かで学びが多い。私は強くなると共に賢くなりたいのだ。はは、猪突猛進の私がこんな事を言ったら、おかしいだろう?」  セミラは青く真っ直ぐな眼差しでミトラスへ問う。  ハーブティーを嗜むのは表向き、薬学の習得が目的であると見抜けないほどミトラスは曇っていない。
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