4 祭り2

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「ーーなどと、妻が申しておりますが、如何致しましょう?」  場に居る誰もがミトラスの行動に驚きを隠せない。  ヘリオトロープも黒い瞳を窺う。  実は悪戯好きの花の精にちなんでドレスを用意しただけで、女王は本気でセミラへ身に着けさせる気はないのだ。なによりミトラスがその腹積もりに勘付かない訳がない。 「陛下」  指示を急かすミトラス。 「セミラを妻と呼ぶものだから混乱してしまったわ」 「結婚せよと命じておいて酷い方です。それで? 僕の女装をお目にかけても?」 「え、えぇ、よろしくてよ」 「畏まりました。参加者で一番愛らしくなる為には時間が要りますので」  これで失礼しますと加え、セミラの衣装を抱えて退出していく。  その際、そっとセミラの指を剥がしたのだが、彼の手は燃えるような熱さを伝える。 「なによ、貴方達うまくやっているんじゃないの」  女王が残ったセミラに微笑みかけた。 「うまくなんて……」  さぁ、ミトラスが惚れ薬を開発している件を訴える機会がやってきた。ところが、セミラの不満は喉に張り付き出てこず、そればかりか別の言葉を紡ぐ。 「賢者殿は陛下の命令で結婚したまで。私の為に衣装を交換したんじゃない。期待しては駄目です」 「そうかしら? 自尊心が山より高いミトラスが女装よ? きっと、わたくしが命じてもしないわ。セミラが困っているのを見過ごせなかったの」  そう言われてしまえば、ますます惚れ薬について語れないじゃないか。  セミラは唇を噛む。 「貴女は女性であることに後ろめたさを覚えているようだけど」  ふいに核心へ触れられ、セミラの心の柔らかい個所が軋んだ。
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