4 祭り2

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 控室の一角、どす黒い空気を放つ花嫁がいる。今年夫婦となる者達が集まる中、雰囲気から切り離されたように浮いていた。 「やぁ、花嫁さん。ご機嫌はどうだい?」  セミラは臆することなく話し掛け、周囲にも軽く会釈する。 「……はぁ、いいはずがないでしょう」  くるりと見返るミトラスは手鏡を握りしめ、眉を吊り上げた。 「似合っていると思うが?」 「えぇ、えぇ、そうでしょう、当たり前です。僕は今、街で一番愛らしいのは疑う余地もない」  恥じらうどころか、出来栄えに自信を持つ。現に彼の変身は目が眩む美しさを放ち、まるで絵本から抜け出してきたみたい。  ただし、カツンッと踵を鳴らして立ち上がると見上げる背丈、それから逞しい肉付きを感じる。 「はは、しかしドレスがきつそうだな。針子は?」 「こちらは貴女のドレス。せっかく賜わった品に手を加えられません」 「え、あっ」  セミラは裾上げしてしまったミトラスの衣装をみ、バツが悪くなった。 「構いませんよ。貴方は警護をする立場ですし、丈の合わない服じゃ支障が出るでしょうに」 「それで女王の挨拶を聞きに来なかった?」 「さぁ、どうでしょう? この姿を茶化されたくないからかも知れませんね」 「茶化すもなにも、とてもーー美しい」
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