5 祭り3

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5 祭り3

■  今年夫婦となる者が舞台上で馴れ初めや互いに惹かれた部分を披露するというーーいわゆる惚気の場。  そこへ騎士と大賢者が並び、語っている。これは歴史的瞬間であり、否応なく一挙一動が注目されるだろう。 「尊敬するところ? そうですねぇ、任務に忠実な面でしょうか」 「同じく」  こういうやりとりはミトラスが長けている。彼がにこやかに当たり障りない答えをするので、セミラは右に倣えの構えを取るだけ。はっきり言って退屈だ。  他の夫婦がどんな風に関係を深めていったのか聞いているうち、恋愛結婚と政略結婚の違いを思い知っていく。 「次は指輪をみせて下さい。そちらをどんな風に選んだのか、拘りの部分をお話下さい」  司会の女性の言葉でそれぞれが会場に向かって見せる。満面の笑顔へ誓いの輝きを添えられ、セミラもそうしようとするが手が動かなかった。 「どうかしました? 浮かない様子ですね?」  右手を繋いだままの距離で尋ねてくる。 「場違いだなと思って」 「はぁ、今更でしょう。他は紆余曲折ありながら夫婦となったんですよ。絆というか結び付きが方が僕達と違いますし」 「それはそうだが……」 「笑顔を崩さないで。貴女が参加したいと言ったんじゃないですか? きちんとやり遂げなさい」  割り切って夫婦を演じるミトラス。指輪の質問が回ってくると滑らかに説明する。 「僕達の指輪にはカラスと金獅子が彫られていましてーー」 (不可侵の呪いを掛けているーーとは明かさないか)
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