5 祭り3

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「騎士団も魔術師も自分等だけ良い生活しやがって!」  そんな非難と炎が同時にセミラの足元へ広がった。  燃え盛る不測の事態、人々は我先に逃げ出そうと混乱の渦へあっという間に飲み込まれる。悲鳴や罵声が混じり合い、祭場は地獄と化す。 「慌てるな! 大した火ではない! ゆっくり出口へ向かうんだ!」  セミラは外套を脱ぎ消火作業をしつつ、的確な指示を出した。避難経路は頭に入っているので全身で方向を指すと、舞台上の夫婦や司会者にも合図する。 「どうした? 何故、逃げない?」  だが、一組の夫婦が固まったまま動けない。どうやら女性の腰が抜けてしまったみたいだ。 「賢者殿、彼らを連れて逃げてくれないか?」   セミラを囲む炎は叩いても叩いても鎮火しない。それを不思議に感じながら声を掛ける。  と、ミトラスは既に夫婦へ術を唱え、安全な場所に転移させた。 「危ない!」  ホッとしたのも一瞬、次は黒い塊がミトラスへ飛び込んでくる。  駆け寄ろうするも熱がセミラの進路を阻み、少し接触しただけで衣装が溶けてしまう。 「お嬢さん、その炎は普通の炎じゃないよ」  聞き慣れない声にセミラは目を凝らす。  火の粉がパチパチ弾ける光景は揺らぎ、ミトラスの肩に乗ったカラスが喋ったように映った。 「なぁ、肩にゴミがついているぞ」 「ゴミ!? ミトラス様の使い魔をゴミ扱い? なんて非常識なお嬢さん! 失礼しちゃうカァカァ」  見間違いじゃなく、カラスが人の言葉を話す。 「なんと……カラスが喋るとは」  セミラは呆ける。 「ボーッとしてると焦げちゃうよ! ねぇ、ミトラス様、早く助けなくていいの?」
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