エピローグ

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「結婚式といえば、私に新しい衣装を仕立てるのか?」 「まさか金色の鎧を纏いたいとか、猪の仮装をしたいなどと言わないですよね?」 「さ、流石にそこまでは。女王から賜わった品があるし」 「はぁ」  ミトラスは眉間を揉み、大きな溜息を吐く。 「セミラはあの時、僕が女装した意味を理解していないんですね」  プイッと横を向き、拗ねてみせる。ミトラスには意外と子供っぽいところがあって、日々表情が豊かになっていった。 「私が着るのを戸惑っていたからだろう? そのくらい分かってるさ」 「ち・が・い・ま・す! 一生に一度しかない花嫁衣装なのに、あんな事情で身に付けさせたくなかったからです! 貴女には僕が最高のものを用意したい」  声音の厳しさから独特な甘さを嗅ぎ分け、セミラは頬を染める。あれほど苦痛であった女性として扱われることが今となっては嬉しくて。 「ありがとう」  照れつつ礼を告げ、ミトラスへ寄り掛かる。 「僕はね、ありがとう、すまない、頂きますにごちそうさまをしっかり言えるセミラが好きですよ?」 「え? あぁ」 「今、僕がどんな言葉を求めているのか、分かりませんか?」 「分かるが、ここで言うのか? 誰かが聞いているかも知れないじゃないか!」  愛の言葉を要求されると、セミラは勢いよく立ち上がった。日常的な挨拶ならともかく、愛情を示すのは慣れない。どうしても照れてしまう。
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