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彼女とデートの時、日記の話になった。
僕は日記など小っ恥ずかしいし、絶対三日坊主で終わってしまうので書いたことがない。
ところが彼女は毎日しっかり書いていると言う。
僕は冗談で見せてよと言ったら、彼女はあっさりいいよと言ってバッグから日記帳を出してきた。いつも持ち歩いているらしい。
「別にたいしたこと書いてないし」
彼女はそう言って僕に日記帳を渡そうとした時、何か思い出したかのように、ちょっと待ってねと言った。バッグから今度は黒いマジックを取り出し、日記帳をめくりながら何箇所か黒塗りをしたようだった。
「はい」
渡された日記を僕は読んでみた。
確かに毎日の些細な出来事が書かれているだけだった。
彼女が黒塗りをした部分は最初はわからなかったけど、もともとボールペンで書かれているので読めてしまうところもあった。
僕はあえて何も言わず、彼女に日記帳を返した。
「この消したところ、なんて書いてあったかわかった?」
「わかんない」
僕はあえて嘘をつく。
「きっとこれからも増えると思うよ」
「そうなんだ」
僕は嬉しく思った。
彼女がマジックで消したところには、僕のことが「好き」と書いてあったから。
THE END
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