記者会見

3/6

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「なるほど。桂総理が言うには、実際の事件発生時刻と、警察が事件が発生したことを認識するまでには、大きな時間差がある、ということなのでしょうか?」  桂総理に、前列にいた記者が、そのように質問をした。桂総理はその問いに、大きく頷き、説明を続けた。 「はい。あなたの言う通りです。時間差ができてしまうことで、その上さらに、先程も説明をしましたが、警察は、捜査、という非常に時間と手間のかかる作業をしなければならないのです。」  桂総理の言う、捜査、というものは、手間だの、作業だの、という言い回しは、現在、懸命に働いている警察にとっては、余り、良い表現方法とは言えないものであった。当然、記者からは、その点についての質問が出てきた。 「桂総理。その言い方は、現在、多数の犯罪の捜査にあたっている警察の方々に対して、あまりにも失礼ではないですか?いくらなんでも、捜査を作業などという言い方は、ひどいと思います。」  それは、桂総理も十分に承知していることではある。だが、桂総理は、あえて、そういう言い回しをしたのだ。あまりにも膨大になってしまった犯罪件数。一件一件解決するだけでも、結構な時間がかかるというのに、警察の動き以上に次から次へと増えていく事件。桂総理は、時間がかかるから、という理由を強調したいがために、あえて、この選択をしたのだ。 「えー。今の質問の通り、確かに、今の私の言い方は、適切ではないかもしれません。だがしかし、皆さん。今の治安の現状を考えてください。もし、すべての事件の犯罪者が、全て現行犯であるかのように、最初から証拠が出揃っていたらどうでしょう?」  最初から証拠が出揃っていたら、という、桂総理の、その言葉に、取材陣達は皆、一つの考えが浮かんできた。だが、それは、その選択は、絶対にしてはならないもの。だから、誰も、桂総理に対して、『その言葉』を使って質問することはなかった。桂総理の説明は続く。 「さらに、犯罪者の居場所も、常にある程度把握できていたとしたら、どうでしょう?警察の仕事は、今、起きた犯罪に対して、居場所が分かっている犯人の場所に急行して、そのまま逮捕するだけ。それだけで、事件は終了するのです。」  犯罪者の居場所が常に把握できる、という事。先程の事も合わせると、取材陣の考えていた考えが、確実なものとなってきた。このタイミングで、一人の記者が、思わず口に出してしまう形で、桂総理に質問をした。 「総理、それは、国民を監視する、と、言っているようなものですが、どういう事ですか?総理は、国民を監視するおつもりなのですか?」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加