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テレビにて、記者会見を見ていた、赤島警察庁長官と、室伏警視総監は、しばらく無言のままでいた。二人とも、言葉を失っていたのだ。なぜなら、赤島が出した案が、公の場で全否定されたのだ。それだけではない。秘密裏に進めていた、この案の情報を週刊誌に提供したのが、桂総理本人だったということ。その上での全否定。これは、警察そのものの実権を、桂総理に奪われかねない、という事にも、二人はとらえていた。
そんな中、内線電話のコール。コール音で我に返った赤島は、すぐさま受話器を取った。
「何?どういう事だ?まあ、分かった。直ぐに準備をする。ああ、今、室伏警視総監もちょうどここにいるから、」
受話器を置いた赤島に、室伏が近付いてきた。
「おい、赤島さん。今の内線の内容は?どうして、私の名前を出したんだ?」
「ああ、それなんだが、取りあえず、座ってくれ。」
赤島にそう言われた室伏は、赤島が指差したソファーの方へと移動し、そのままソファーに座ると、少し遅れて赤島も、室伏に続いて、室伏の向かい合わせにソファーに座った。
「それで?」
「ああ、何故か、今、桂総理大臣が、ここに向かっているらしい。」
「何だと?」
「それに、国務大臣も向かっているらしい。」
「何?国務大臣?あの、大平大伍か?」
「ああ、大平大伍だ。あの、桂総理の言いなりの、大平大伍だ。」
「二人揃って、何の用なんだ?」
「おそらく、今の記者会見のことだろう。私達の所に、よく顔を出せるな、と私は思うんだが。室伏さんも、そう思うだろう?」
「ああ、確かに。赤島さんの案を、桂総理自らが情報提供しておいて。よくもまあ、のうのうとここに来れるもんだ。まあ、言い分くらいは聞いてやろうとは思う。」
「まあ、そうだな。だが、桂総理も馬鹿ではない。何かしらの狙いはあるのだろう。記者会見では言えないような。」
「何故、そう思う?」
「桂総理は、記者会見では、『全ては説明できない』みたいな言い方をしていただろう?」
「まあ、確かに、そのようなことを言っていたな。」
「だから、ここに来るということは、その辺も含めて話をするということだろうと思う。」
「なるほど。」
「まあ、よほどの事ではないと、私は納得できない。なんせ、公の場で、私達警察は恥をかかされたようなもものだからな。」
実際、警察が応援要請を出した、という事実は、第三者からすれば、警察だけでは治安対応ができない、と宣言しているようなもの。つまり、警察は、今の治安に対してギブアップ、根を上げたのだ。だから、自衛隊と消防に泣きつき助けを求めた。
それで、苦肉の策で出した応援要請では、治安対策にはならないと、桂総理に指摘された。
これでは、警察は無能、と、記者会見を見たものは思っただろう。
赤島が恥をかかされた、とは、こういうことなのだ。だから、桂総理がそこまでした理由を、赤島は知りたがっているのだ。
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