序章

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 事実、警察と自衛隊と消防の間には、連携をすることがある。それは、各自治体により、やや異なることはあるが、基本的には、大きな災害があった時だ。この時は、三期間が連携して、災害時の救助等を行っていく。  だが、今回の警察庁からの応援要請は、前述とは大きく異なるものだ。警察庁からの要請は、警察としての業務の応援なのだから。これは、自衛隊と消防に警察の業務をしろ、といっているようなもの。  いくら、警察庁内での反対意見が出ないとはいっても、この要請を自衛隊と消防が承諾するとは、考えにくい。  それ以前に、警察庁が、勝手に動いて、自衛隊と消防に応援要請を出すことなどできないのだ。  警察庁は国家公安委員会。  自衛隊は防衛省。  消防は総務省消防庁。  それぞれが異なる国の行政機関なのだ。そんな者同士での応援要請となれば、それは最早政治なのだ。そうなると、まずは、国家公安委員会は内閣府管轄。そして、防衛省大臣、総務省大臣。この三方での協議にまで、規模が大きくなる話なのだ。  そこまで大きな話になってくると、応援するための絶対的な理由と、にほんぜんたいの警察組織として、まとまった意見書が必要になってくる。そういった資料を持って初めて、協議が始まるというものなのだ。 「まいったな。話は、そう簡単ではないか。」  長官室にて、資料を読みながら、頭を抱える警察庁長官。暫く悩むと、受話器を手に取り、ピピッとボタンを押した。その表情は、明らかに面倒くさい、と言わんばかりである。  
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