序章

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「おう、私だ。いきなりで悪いが、警視総監と話がしたい。近いうちに、ここに来るように手配をしてくれないか?用件は、治安対策について。じゃあ、よろしく頼むよ。」  そう言って、警察庁長官は、受話器から手を離し、ゆっくりと背伸びをしながら立ち上がり、窓の方へと歩いていった。 「ふう、面倒だが、仕方がない。少しでも進めていかないと。」  警察庁長官は、外の景色を見ながら、そう独り言を呟いていた。  警察庁長官である赤島信治と、警視庁の警視総監、室伏圭吾は、決して友好な関係ではない。お互いに強気な性格なのか、ウマが合わないのか、過去に度々衝突してきたのだ。  全国の警察組織をまとめあげたい警察庁と、大都市東京都の警察組織警視庁。  大都市東京都は、他の県、府、道とは事情が違う。室伏は、東京都としてのプライドを持っているせいか、全国をまとめあげたい赤島の意見を、素直に聞くことは、ほぼなかったのだ。東京都とその他。そういう考えが、室伏は特に強かった。だからこそ、赤島の提案に対して、今まで素直に従うことは、室伏は、してこなかった。  また、言い争いになることは、赤島は容易に想像できた。だからこそ、赤島は面倒そうな表情をしていたのだった。  だが、現在の日本の治安の悪化の状況は、言い争いが面倒だからやりたくない、という、幼稚な言い訳をしている場合ではないのだ。そういう状況だから、赤島は、ためらうことなく、直ぐに、室伏と合う段取りをとったのだった。
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