序章

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 赤島が手配をしてから数日後、警察庁の入口前に、黒い高級車が次々と近付いてきた。入口前で、一列に並んで停車した車の運転席から、それぞれ男が降りてくると、直ぐ様、右側後部座席の扉を開けた。  その扉からは、それぞれ一人の男が出てきた。全員、ある程度の高年齢であり、警察の制服を来ている。降りてきた男達は皆、移動手段として高級車に乗り、運転手を使うということは、全員、身分が高いポストに着いていると、容易に想像できる。  職員に案内され、警察庁内の廊下を歩く男達の列の先頭には、室伏警視庁警視総監の姿があった。  中規模の会議室へと入った男達は、それぞれ無言で席に着いた。暫くすると、赤島警察庁長官が、やや挑発じみた表情をしながら同じ会議室に入ってきた。  赤島は、室伏達を見るなり、ゆっくりと座りながら、小馬鹿にしたような言い方で、室伏達に挨拶をした。 「これはこれは室伏警視総監。わざわざ大人数で、ようこそお越しくださった。」  赤島の挨拶を受けて、室伏は、背もたれに背中を付けながら腕を組み、赤島と同じように挑発ぎみに返答をした。 「これはこれは。ご丁寧な挨拶を。急な呼び出しで、我々の予定を合わすのに、苦労しましたよ。まあ、こうして、ちゃんとここに来れたわけですがな。」  室伏は、皆のスケジュールを合わすのが大変と言ったのは、嘘である。これは、わざわざそちらに来てやったのだ、という、赤島に対して借りを作ったのだという意思表示のようなものだった。これにより、自分達が優位な立場に立つためである。  赤島は、大人数で来るように手配したわけではない。室伏が一人で来ても良かったのだ。だが、赤島は、ここに来る際に人数の指定はしていなかった。だから、室伏は、優位な立場に立つために、わざわざ大人数で警察庁に来たのだった。  そんな幼稚な態度をとっている室伏達を見て、赤島はあきれたように、このような挨拶をしたのである。今は、普段通り、小競り合い、挑発合戦をしている場合ではないというのに。そういった意図も、あの挨拶には含まれていたのだ。
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