序章

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 少しの間、赤島と室伏のにらみ合いは続いた。赤島は、大きく深呼吸をして、強い口調で口を開いた。 「いい加減、腹の探り合い、責め合いはやめないか?」  まるで、子供をあやすような赤島の第一声。室伏は、これは、赤島の挑発行為と捉えた。 「なあ、赤島さん。そんな事を言うために、私をここへ呼んだのか?馬鹿馬鹿しすぎるだろう?そんなことのために、貴重な私の時間を奪うとは、何のつもりだ?」  室伏は、赤島の第一声に、嫌みたっぷりで質問を返した。そんな室伏の質問を受けた赤島の表情は、怒りの色は全く見えない。赤島は、室伏に対して挑発したわけではない。単に、話を進めたかっただけ。  ただ、室伏が赤島の言動に対して、挑発行為だと受け取ったのは、今までの関係性が悪すぎたためであった。  今回、室伏側は、治安対策で呼び出されたことは、承知している。だが、室伏は、赤島の顔を見ると、どうしても、こういう態度をとってしまうのだった。  赤島は、そんな室伏の様子を気にすることなく、話を進めていく。 「もう知っていると思うが、今回呼び出した理由は、今後の治安対策についてだ。現在の日本は、治安が悪くなる一方。私達警察の能力以上の犯罪発生率。日が進むにつれ、犯罪の数がどんどん増えてきている。  もう、様子見している場合ではない。早く、何かしらの手を打たなければ。そう思って、私は今回の場を設けたのだ。」  いつもの様子とは違う、目に力の入った赤島の様子を見て、室伏は、態度を改めることにした。赤島の言う通り、小競り合いをしている場合ではない。だから、室伏は、赤島の話を進めるように、今回は、受け身の体制をとることにした。 「それで。赤島さん。私達を呼びだしたということは、何かしらの案が、既にある、ということなのか?」 「ああ、そうだ。今回は、私の考えている案を、確認してもらいたくて呼んだのだ。」 「電話とかでは駄目だったのか?急いでいるのなら、その方が早いだろう?」 「いや、こういうことは、確実に会って話した方が、確実で安全。それは、室伏さんも分かっているだろう?」 「まあ、確かにそうだな。それで、案、というのは?」
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