序章

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 一週間後、赤島の部屋には、室伏が来ていた。今回は、室伏一人で、警察庁に来ていた。二人の表情は、どこか険しい。二人の間を挟んだ机の上には、週刊誌が一冊開いて置かれていた。 「おい、室伏さん。これは、一体、どういう事なんだ?」 「私に聞かれても、知るわけがない。」 「なら、何故、こうなったんだ?」 「だから、知るわけないだろう。」  二人が言い争いをしている理由は、その週刊誌の内容にあった。週刊誌が開かれた所に記載されている項目。それは、 『警察、自衛隊と消防に業務応援要請か?』  今回の赤島が提案した件が、何故か週刊誌の耳に入っていたのだ。これは、何らかの形で、情報が漏洩していた、ということである。  赤島は、今回の事を、外に漏らしていない。そうなると、今回の情報漏洩をした者は、先日警察庁に来た警視庁幹部の誰かという事。赤島はそう考えたのだ。  だから、赤島は、週刊誌のこの記事を見るなり、室伏を呼び出した、ということである。  一方の室伏も、警視庁幹部らは、情報を漏らし者など一人もいないのだ。  お互いが、潔白。だからこそ、今、この場で言い争いになっていたのだ。お互い対抗意識が強いせいか、両者とも引く気配はなかった。 コン、コン。  そんな中、ノック音とともに、一人の職員が、息切れをしながら入ってきた。 「なんだ!勝手に入ってくるとは、どう言うことだ!」  職員をしかりつける赤島。そんな赤島の様子を見た室伏は、得意気な表情に変わった。 「おやおや、赤島さん。部下の教育がなっていないな。そんなことでは、情報漏洩しても、仕方がないんじゃないのか?」 「何だと?今のこれと、今回の件は、関係ないだろう!」 「そんなこと、私に言われても。だが、実際、こうして、部下が勝手に入ってきたじゃないか。教育がなってないのは、事実だろう?」 「くっ!!」 「二人とも、落ち着いてください。取りあえず、テレビを見てください。」  二人の言い争いを遮るように声を荒らげる職員を睨み付ける赤島と室伏。だが、職員は二人を気にすることなく、テレビの電源を入れた。 「とにかく、テレビを見てください。失礼します。」  職員はそう言いながら、部屋から出ていった。 「何なんだ?一体、血相変えて。よほどの事がテレビで放送されているのか?」  赤島は、職員が出ていった扉を見ながらそう呟いていた。 「おい、赤島さん。今は、言い争いをしている場合ではないらしい。とにかく、テレビを見てみるんだ。」  赤島とは違い、テレビの電源か付いてから、テレビを見ていた室伏。そんな室伏の言葉を聞いて、赤島はテレビの方へと顔を向けた。 「こ、これは?」  テレビの画面には、 『警察庁、全国規模で自衛隊と消防に応援要請か?』 とのテロップとともに、首相官邸にて、メディアの取材陣に囲まれている、桂康弘総理大臣の姿があった。
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