記者会見

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「総理。一言お願いいたします。週刊誌に書かれている、この記事をこ存じでしょうか?」 「総理。一言お願いいたします。今回のこの記事。警察の応援要請ですが、災害が起こっているわけではないのに、自衛隊派遣など、出きるのでしょうか?」 「総理、一言お願いいたします。消防が警察の応援要請に出向いた場合、救急、火事等の事案が起きた場合、対処出来るのでしょうか?」  桂康弘総理を取り囲む取材陣から、次々と質問が飛び交っている。今回の週刊誌に出ていた記事は、まさに、驚くべき事態だったのだろう。あっという間に、各方面の報道局の取材陣が総理官邸に集まったのだった。  取材陣の熱気は凄かった。これは、大スクープになるという期待だけではない。現状の日本の治安対策に繋がるかも、という、そういった期待も、少なからずあったのだ。  みんな、取材陣も、現在の日本の治安の悪さにはうんざりしていたのだった。だから、ようやく治安対策に政府が動いてくれるのか。週刊誌の記事を見て、そう、希望が持てたのかもしれない。こんな活気のある取材陣は、本当に久しぶりだったのだ。  そんな、熱狂しているとも言える取材陣の前で、桂総理は、両腕をを肩の位置まで広げたた後、顔の位置まで上げ、手の平をしたに向けると、両腕の肘から先を何度が上下に動かした。  取材陣に対して、落ち着け、と言っているようなポーズであった。  そんな桂総理を見て、取材陣は、徐々に声を上げるのを止め、桂総理が口を開くのを待つ体制になっていった。  少しの動きで、取材陣の動きをコントロールする桂総理。なかなかのカリスマ性を持っている男だ。だからこそ、取材陣は、今回の、この政府の動きに期待して、集結したのだろう。 「お静かにしていただき、ありがとうございます。」  ピタリと声が止んだ取材陣に対し、丁寧な口調で礼を言いながら、軽く頭を下げる桂総理。と同時に、一斉にカメラのフラッシュの嵐。テレビを見ている者からすると、とてつもない重大発表があるのだろう。そんな、ドラマチックな光景だった。 「えー。では、最初の質問から答えさせていただきます。今回の週刊誌の記事の件ですが、私も、その週刊誌を拝見させていただいております。」  桂総理が口を開く度、フラッシュの嵐が起こる。そして、カメラのフラッシュが収まると、取材陣の誰かが、桂総理に質問をした。 「今回のこの記事、実際、警察からの応援要請は、事実ではないのでしょうか?今の総理の言い方だと、警察の応援要請は、週刊誌を見て、初めて知った、という捉え方ができてしまいますが。」  質問した記者の方を見て、指を指しながら、桂総理は、少し笑顔になりながら答えた。 「あなたの今のは、とても良い質問です。私は、今回の週刊誌の記事の事については、事前に把握しておりました。」  桂総理の答えに、少しざわつき始める取材陣。 「では、何故、あんな言い方をしたのですか?今の総理の答え方も少し不自然です。把握していた、というのも、中途半端な気がします。我々が知りたいのは、今回の警察の応援要請が、決定事項なのか、それとも、記事の件が事実ではないのか、です。」  その記者の問いは、答えを急いでいるようだった。それは、仕方がないのだ。先述の通り、皆、治安対策に期待しているから。だから、答えを急ぐ。  だが、次の総理の口から出た総理の返事は、誰もが予想できない、衝撃的な者だった。 「えー。皆さん。お急ぎだとは思いますが、順を追って説明させていただきたいと思います。今回のこの記事、週刊誌に情報を提供したのは、この私なんです。」
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