side 高峯

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「女としてもう終わりなんだなーーってつくづく感じちゃったのよ。でも、夫以外には抱かれたくないじゃない」 橋崎友姫は、ポッチャリした女の人に、一時間近く同じ話をしている。 いつまでも、ダラダラと話すのが好きなのは橋崎友姫の特徴だった。 いつまで、似たような話をするんだよ。 橋崎に呼ばれた友達であるは、しんどそうな表情を時々浮かべる。 「拓也、帰る時どうする?」 「ちょっとあっちをつけたいんだけど」 「じゃあ、俺が橋崎をつける」 「よろしく」 ようやく話が終わり帰宅するりな子の後をつける。 橋崎の友人だから、きっと何か知ってるよな。 俺は、彼女の後をつけて、家を確認し、後日、改めて、橋崎について話を聞きに行こうと考えていたのだ。 「先生……」 帰宅した彼女を待っていた人物に、俺は驚いた。 そこに居たのは、空だったからだ。 何で、空が? 家の場所はわかったから、いったん事務所に戻るか。 事務所に戻るときいちゃんも帰っていた。 「おかえり、どうしたの?」 「いや、後輩がいてさ」 「後輩?」 「あっ、別に……。それで、橋崎は?」 「あーー、何かこの週刊誌持ってた」 「これって、嘘とか平気で載せるやつ」 「そうそう、それで、何か、楽しそうに誰かと電話してた」 「電話?」 「うん」 「何て話してた?」 「聞きたいと思ったから、録っといた」 きいちゃんは、録音した音声を再生する。 「やっぱり、そうだったわ。何か、似てると思ったのよ」 相手の声は、電話だから誰だかわからないが橋崎は嬉しそうに笑っている。 「だって、幸せそうでムカついたのよ。一年前、あそこで、りな子と旦那さん見かけたじゃない。そっから、許せなかった。何で、幸せそうにあいつが笑ってて、私は近所のあの女に息子の車の文句言われて、旦那は女とデートしてて。何か本当に神様なんていないって思ってたのよ」 橋崎は、少し口調を強めながらいっきに話した。 「そう。だから、ようやく三ヶ月前に落とせたのよ。長かったわ。だって、あいつの旦那。あいつの事を信じてるって言うし。そうそう、記事になったみたい。へぼ探偵だったけど、調べるのだけは得意だったから助かったわ」 橋崎は、嬉しそうにまた笑う。 探偵を使って、何かを調べさせたのか? 「先生なんて呼ばれてるらしいわ。馬鹿馬鹿しいったら、ありゃしない。担当マネージャーは、若い男みたいよ。この記事書いた人から聞いた。探偵に依頼はしなかったわ。あんなおばさん丸出しの女、相手にしないわよ、若い男は……。りな子?りな子は、かなり太ってたわよ。女捨ててる感じ。だから、彼も抱かないんじゃない」 橋崎が話す週刊誌の記事を見る。 ルピナス……って、さっき空がいたのはそういう事か? って事は、りな子ってのは先生って呼んでた人だ。 名字は、確か……山野だった。 「まだまだ、彼と楽しむつもりよ。だって、欲しいと思ったんだもん。だけど、まだ、完全に私のものになってなかったのよ。これで、揺らげばいいんだけど。あっ、そろそろ帰らなきゃ。うん、また連絡するね、じゃあね」 橋崎は、電話を切る。 誰と話していたのかは、わからなかった。 「たぶん、不倫してる」 きいちゃんの言葉に俺は頷く。 「りな子って人から依頼を受けれたら、橋崎をさらなる地獄に落とせるよね」 「そうだな。でも、気づかなかったら依頼をしてくる事はないし。それに、探偵はここだけじゃないから」 「そうだけど。復讐する為には、その人からの依頼は絶対だと思う」 「わかってるよ」 さっき空が一緒に居た人がりな子って人なら、彼女から依頼を受けられたら橋崎を地獄に突き落とす事が出来るはずだ。 浮気調査からの別れさせ屋的な事なら、きいちゃんが動けるし、俺達の得意分野だ。 だけど、そんなうまくはいかないよなーーって悩んでいたのに、空からの依頼がやってきた。 願ったり、叶ったりの出来事に俺は、依頼をタダで引き受ける事にしたんだ。 どのみち、橋崎を調べれば山野さんの夫の動きは掴めるからだ。 依頼内容が増えたから、俺は外部の探偵事務所に協力を要請する事に決めた。
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