二刀流令嬢・朝稽古を終える・1

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二刀流令嬢・朝稽古を終える・1

「はははは!」  汗だくで道場で両手両足を伸ばし、大笑いする二人。  外は大雨なのに、あぁこれが自由なのだ! あぁこれが幸せなのだ!! とヴァレンティーナの心は輝きに満ち溢れた。  こんな楽しい事は初めての経験だ!  そう思ったが、ラファエルのオレンジの香りを嗅いだ時に……何か記憶の底で……。    これは……二度目……?  ヴァレンティーナは寝転んだまま、目を閉じる。 「ラファエル様~! ヴァレン様! やっぱり稽古をしてらしたんですね~!!」  ハッ! と記憶探しが中断された。  メイドの二ナだ。   「もうお昼前ですよ~ブランチにしましょうー! アリス様もお探しでしたよ!」 「あぁすまない。わかった。みんなで先に食べててくれ!」  ラファエルが起き上がって、汗だくの髪をかきあげる。  熱いからだろう、シャツの胸元をあけて逞しい胸元が見えた。  ドキリとしてしまう。 「なぁ、ヴァレン。……あのさ、アリスは、君の恋人なのか……?」  そんな時に唐突に出されるアリスの話題。  何故? 「……君は、ローズ様という奥方がいるんだろう?」  昨日、姿を見せなかったローズというガウンの持ち主。  突然の女性話に、珍しくヴァレンティーナはムッとなってしまう。 「え!? 奥方!? ローズは妹だよ」 「妹? ……じゃあ君は独身か」 「あったりまえだろ! って言うのも情けないが……」  何故かホッとしている自分に気付く。  しかしこの男は、アリスとの事を聞いているのだ。 「今夜には帰ると思う。あいつも剣をやるんだ。会わせたい」 「そうなのか……。アリスも私の妹のような存在だ。恋人ではない」 「そうか……そうか。色々と誤解をしていたようで、悪かった」 「別に、謝る事はないさ」 「そうか、よかった。なぁ、旅の目的はなんだ? 詳しく聞くのも……と思ったが急ぎの旅なのか? どこへ向かってるんだ?」  自分の事情を話しても、この男は軽蔑しない……そう思う。  でもそれは自分の願望のような気もする。
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