二刀流令嬢はブランチで今日の予定を決める

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二刀流令嬢はブランチで今日の予定を決める

 昨日の面々が集まって、ブランチの時間だ。 「今日も雨は止みそうにない。畑仕事は今日も休みだな。あとで川と村の様子を見てこよう。大雨で不安がある家には屋敷に来るように伝えてくれ。その時には食事も用意してほしい」  ラファエルが食事を取りながら、皆に話す。  二日酔いや寝不足の様子の者もいるが、皆がウンウンと頷いて今日一日の行動を決めているようだ。 「そして素晴らしい剣の使い手のヴァレンと、アリスは数日此処に滞在してくれる事になった」  ルークが『やったー!』と叫び、皆も喜びの声を上げる。 「す、数日?」  明日までの話では……とヴァレンティーナは驚いたが、隣のアリスは嬉しそうだ。 「アリスが数日いいと言っていたから」 「アリス……」  パンを食べているアリスを、ヴァレンティーナが横目で見る。 「えへへ~だって、ここの御飯はすっごく美味しいんですもの~それに雨だし!」 「それはそうだが……お世話になる以上、何か私達にも仕事をくれないか? ラファエル」  突然の申し出に、ラファエルも皆も目を丸くした。 「いや、ヴァレン。それは別に……俺が是非にと言ったことだし」 「しかし……皆が働いているなか、何もせずに美味しい御飯と柔らかなベッドで寝るわけにはいかない」  『それでは何も変わらない』と言いそうになるのを堪らえる。 「……でも、ヴァレン様は何をなさいます? なにかできます?」 「ぐっ……!」  隣のアリスの痛い一言。  この妹分は、たまに容赦がない。 「言ってくれれば、なんでもしよう。皆様、御指導頂きたい」  ヴァレンティーナは頭を下げるが、それを見て使用人達は少し困惑している。  誰もが、この人は高貴な方に違いない……と思っているのをヴァレンティーナは気付いていない。 「では、私はメイド仕事をお手伝い致しますから、ヴァレン様はラファエル様と御一緒してお手伝いをするっていうのはどうですか?」 「えっ……?」  『それはいい』と皆が頷く。 「で、でも……ラファエルと一緒はアリスの方が」 「え? 何故です?」  『それはラファエルが、お前を気に入っているから……』とは言えない。  アリスだってラファエルをいい男だと言っていたし、滞在も喜んで了承した。  二人は惹かれ合っているのでは? とヴァレンティーナは思ったのだ。  でも、そう思うと何故か心がチクリとする。   「じゃあヴァレン。雨の中悪いが、ちょっと付き合ってくれ」 「え!? あ、あぁ……わかった」  アリスの隣にいたメイドのドナがこれからの仕事をアリスに伝え、アリスはうんうんと要領を得たように聞いている。  子どもの頃からメイドとして働いてきたアリスはなんでもできるのだ。 「お洗濯、私がしておきますね!」 「ありがとう……頼むよ」  誰も何も言っていないのに、アリスと比べると自分が剣を振るうしかない能無しに思えて……。  ヴァレンティーナは紅茶を、苦いまま飲み干した。
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