気付く恋・2

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気付く恋・2

 そしてパーティーの時間。   「ラファエル様! お誕生日おめでとうございます! 乾杯!」 「「「乾杯!」」」  昨日中止になったパーティーが開かれて、今夜も大いに盛り上がる。  雨で不安な村人は屋敷に来るようにと言ったため、お祝いに来た家族もいた。 「アリス、パーティーの手伝いまでしてくれたらしいな。ありがとう」 「いいえ、少しでもお役に立てたのなら嬉しいです。ラファエル様お誕生日おめでとうございます」  この屋敷のメイド達は、メイドと言っても厳しく躾けられてはいない。  アリスはどこの貴族のメイドになっても恥のないように幼少の頃より働いてきたメイドだ。  厨房で働いた事もあって、料理もできる。  もちろん素性がバレないように加減はしたようだが、パーティーの飾り付けなどで本領発揮をして大活躍だったらしい。 「このオレンジの飾り切りは、すごいな」  ラファエルの畑で採れたオレンジや他の果物を、綺麗に飾り切りした一皿は皆の注目を浴びた。 「うふふ。ナイフの扱いには慣れておりますので! 私からのプレゼントでーす!」 「ありがとう。今度俺にも教えて」 「もちろんです~~~!」  背が高く逞しいラファエルと、小柄で可愛らしいアリス。  誰が見てもお似合いに見える。  ヴァレンは、男達と剣の話をしながら二人を眺め紅茶を飲む。 「ヴァレン! 今日はもう少し飲もうぜ」 「いや……」  少しヴァレンの表情が暗い事を、ラファエルは見逃さない。 「夕方の事は気にするな。話し合いの場がほしいと手紙を出す。その時にしっかり息子からの嫌がらせをやめろと伝える。嫌な思いをさせてすまない……」 「すまない、私のせいで余計な負担を……」 「ほら! 今日は俺の祝いだし、楽しく過ごそう!」  そう言われて、ヴァレンティーナも不躾だったと微笑む。 「そうだな、祝の席だ」 「そうそう! 祝ってくれよな! あはは」 「確かにな……私からも何か誕生日プレゼントがあればよかったんだが」 「こんなに素晴らしい出逢いがプレゼントだよ。ありがとう」 「えっ……」 「兄様ー! アリスもスター団員フラン様を知っているんですって! お好きなんですってよー! 今日は私の部屋に泊まってもらうわ! 朝まで語るの!」 「ははは、やっぱり仲良くなったな……本当に感謝してるんだ」  アリスとローズを見て、優しい目をするラファエル。  アリスを……見つめてる? 「ん? 俺の顔になんかついてる?」 「い、いや。ラファエル、誕生日おめでとう」 「あ! ヴァレン、やっぱプレゼントくれ!」 「な、なんだ?」 「明日の稽古! また、がっつり頼むよ! 最高に楽しかった!」 「はは、あぁ。付き合うよ。私も楽しみだ」  今朝の稽古がとても楽しかったのは、ヴァレンティーナも同じだ。 「明日も明後日も、明々後日も……稽古できたらいいのにな」 「はは……それは……私達は旅人だから」  そう、此処はただの通過点なのだ。 「アリスは、此処のみんなも気に入って、仕事も楽しいらしいぞ」 「……そうか、あの子はどこででも上手くやれる子だ」 「ヴァレンもさ、此処で学校の先生なんかどうだ? 剣だけじゃなく、勉学にも長けているだなんてやっぱすごいな!」 「今日教えたのは本当に初歩だよ、中途半端に子供に教えるのはよくない」 「別にそんな堅苦しく考えなくてもいいさ。道場も広げたいと思っているし……」  ラファエルが、この村にいられるように仕事を紹介しようとしている?  この村で……新しい人生を始めたらいいと……? 「……いや……あの……」   「あー、ごめん。突然に……でも……アリスから行き先のない旅だって、聞いたんだ」 「アリスが……」  アリスは思った以上に、ラファエルに気を許している。  自分が滞在すると言えば、アリスは喜んで賛成するだろう。  ラファエルはアリスが村にいてほしくて、そのために自分を説得をしているのでは……?   「だから、ヴァレンも少し……いや真剣に考えてみてくれないか?」 「あ……あぁ……」   「……ヴァレン?」   「いや、ありがたい言葉だ。嬉しいさ」  動揺を隠すように、ヴァレンティーナは微笑む。  アリスのような天真爛漫な笑顔ができるわけではないから、口の端を上げただけで皆が騙される。 「……そう言ってくれたら俺も嬉しいけど……本当に大丈夫か?」  ギクリとする。 「何故? 微笑んでいるのに、酷いな」
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