伝えられる想い・2

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伝えられる想い・2

「アリス?」 「アリスに惚れて、こ、婚約したのではないのか!?」 「え!? 俺が惚れてるのはヴァレンだけだが」  驚き、当然のようには言うラファエル。 「なっ……!」 「えっ? 俺は、すごく……ヴァレンに好きな気持ちを伝えていたつもりなんだけど……」 「えっ」 「ごめん……剣ばっかなのと、夕方に話したトラウマで、女性経験が全くないのは本当なんだ。だから、全然うまくない……」 「え、そんな……私だって……なにも……下手くそどころか」  初めての恋に、戸惑い……身動きすらできなかった――。 「でも俺は勝手に俺のこと、ちょっとは好きになってくれてるんじゃないかって……思ってたんだけど」 「……え……」 「俺の、うぬぼれ……?」    グッとラファエルが顔を近づけた。  二人の息がかかってキスしてしまいそうな、距離。  雄々しくなったり、可愛く聞いてみたり……ギャップが心臓に響く。   「ラファエル……私は……あの……」  うぬぼれな事があるだろうか?  ちょっとどころではない。  好きで好きで、たまらない……。    でも言葉にならないヴァレンティーナ。  自分の感情を言葉にできないなんて事も、初めてだった。 「アリスに、ヴァレンにハッキリ言えと怒られて……部屋に行ったんだけど留守のようで……眠ったのかとも思ったんだが、なんとなく道場にいそうな気がしたんだ」    もしもその直感で動いていなかったら、ヴァレンティーナは助かっていなかった。  魂で惹かれ結び合う力を、お互いに無意識に感じているようだ。 「は、は、ハッキリ……とは?」 「……えっと……ヴァレン。出逢ってまだ1日だけど……貴女といると、俺はとても楽しくて……すごく幸せで……」  それはヴァレンティーナもそうだった。  ラファエルとの時間は、今までの人生で一番といっていいほど楽しかった。 「貴女の剣の素晴らしさに、俺は心を奪われた」  女が剣を振り、どれだけ罵倒されただろう。  剣を振るために男装し、それも嘲笑され……。  それを、二刀流の剣豪に認められた事だけで目が潤む。  「……ラファエル……」 「……ヴァレン……」  ピタリと歩みを止めて、スーッとラファエルは息を吸った。  真剣な瞳で見つめられて、それだけで心臓が高鳴る。 「ずっと貴女の事を考えてしまう。こんな感情は初めてで……すごく好きだ。愛してる、ヴァレン。どうか俺と結婚してほしい」 「ひゃっ!?」  降り注ぐ、愛の言葉。  自分でもどこから声が出ているのかわからない悲鳴が出てしまう。   「さっきから、めちゃくちゃ可愛いんだけど……」 「ば、ばか……さっきから心臓がもたない」 「そうなの……? 可愛いよヴァレン。とても」 「……ヴァ……ヴァレンティーナというんだ……本当の名前は……」  ラファエルに教えたくなった。  彼に名前を呼んでほしくて、つい言ってしまった。 「ヴァレンが男として振る舞いたいのなら、聞くのは野暮かなと思ってた……美しく気高い名前だね……ぴったりだよ」 「そ、そんなことは」 「ヴァレンティーナ……答えは?」 「でも……私は……何もできない……無能者だ……」 「……本当にそう思っている? ……何もかも完璧なのに……」 「ラファエル……」 「……好きだ……ヴァレンティーナ……」  抱き上げられたまま、鼻を寄せられる。  自分には似合わないと、そう思って閉じた絵本のなかの、お姫様のよう。  拒絶する答えなどない。  そっと瞳を閉じて……熱い唇が合わさった。 「ん……っ……」 「……綺麗で可愛い、そして強い、俺のヴァレンティーナ。好きだよ」  甘い囁きに、優しい瞳。 「や、やめろ……ラファエル……」  暗い夜でも、輝いて見える愛する人の顔がすぐ近くにある。 「何故? 君を愛する俺は嫌い?」 「だから心臓がもたない……」 「俺のこと……好き?」 「……すごく……好き……」    こんな薄暗さでも、ラファエルからの視線が恥ずかしくなって両手で顔を隠す。   「……めちゃくちゃ嬉しい……んでめちゃくちゃ可愛い」 「し、心臓が破裂しそうだ」 「俺もさ。どんな剣豪を相手にした時よりも心臓がバクバクしてる」 「私もだ……こんなの……」 「可愛いヴァレンティーナ……このまま、俺の部屋へ連れて行くよ。俺の部屋で泥を落とそう」 「で、でも……」 「俺は離れたくない、もう二度と一人にしないから」  ラファエルは、どんどん屋敷に向かって歩いて行く。 「しかし……」   「あいつらの事は、みんなに任せて今は君の傷を……」   「い、いやラファエル、私は大丈夫だ」 「ん?」 「奴らのことを縛り上げ、証拠も持ってすぐに駐在所に行こう。今なら撒いた油も残っている」 「それは、そうだが……」  ラファエルもそれは考えている。  だが殴られ数人に犯されそうになった恋人を残していけるか? と自問自答した。  通報は屋敷の皆に任せて、ヴァレンティーナを優先したいと思ったのも当然のことである。
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