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グラウェ師よりオルビスへ
うむうむ、ワシ甘いものは何でも好きじゃよ。
え、違う?
オルビスくんは何を聞きたいって言ったかの?
ああ、アートルムくんのことじゃったか。
あの子が生まれた時にアエスタスくんとウィリデちゃんが招いてくれたんじゃよー。
うん、今はアエスタスくんは魔剣士の長だし、ウィリデちゃんも魔法鍛冶師の長じゃね。
すっごく偉くなっちまって近づけもせんよ。
そのころはまだふたりとも若かったのう。
ウィリデちゃんには言うんじゃないぞ。
今も若い!って猛烈な裏拳で突っ込まれるわい。
あれ、何の話だったかの?
そうそう。
アエスタスくんとウィリデちゃんから名付け親を頼まれとったんじゃよ。
一応ほら、ワシふたりの先生じゃったから。
そりゃ荘厳でぴっかぴかで立派な名前を考えとったよ。
ところがウィリデちゃんが抱いとるその子を見た瞬間、忘れてしもうた。
アエスタスくんにそっくりなんじゃもん。
ウィリデちゃんの赤い髪と緑の瞳は全く受け継がなかったのう。
まるまるして混じりけのない真っ黒な髪と瞳でね。
思わず見事なアートルムじゃなって呟いとったよ。
古語でアートルムは黒のことじゃからねー。
そしたらアエスタスくんがもうぶわーって泣いとるのよ。
あの子ほら、暑苦しいからのう。
「グラウェ師ありがとうございますーーー。素晴らしい名ですうーー」
いやそれ名前じゃないんじゃって言い出せなくなってしもうた。
ウィリデちゃんが何か言うかなってこっそり見たけど言わんかったのう。
呆れた顔はしとったけど。
結局それで決まってしもうた。
それでいいのかって?
そんなもんじゃよ。
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