体育祭

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「ねぇ。桃花が白組の応援団長に声かけられた」 ジュースを桃花と買いに行った楓が一人で帰ってきて興奮した様子で言う。 'ああ、昨日菖蒲先輩が言ってたやつか' あれから昨日、桃花はずっと待ってたが誰もこなくてがっかりしていた。 「おお、なら白組の応援団一人決まったね……?」 私たちは今この瞬間、同じタイミングで疑問が浮かんだ。 係決めはみんな平等に公平でじゃんけんをする。 今、声かけられても負ければ意味なくない? 桃花、受けて大丈夫か? と、心配になる。 「これ、大丈夫?」 芹那は心配でそう言う。 「大丈夫じゃないかも……」 応援団になりたい人は大勢いる。 全員、平等にじゃんけんする決まりだが、先輩から誘われたからという理由で決まったら他の人は納得しないはず。 明日の白組の空気が最悪になる気がして心配になる。 どうしたらいいのかと、頭を悩ませていると「どうしたの?変な顔して?」と後ろから声をかけられる。 「桃花……」 声を聞いてすぐに桃花だとわかる。 「ん?まじ、どうしての?」 私たちの顔がおかしいせいで、本当に心配になる。 「桃花。先輩はなんて?」 楓は前のめりで尋ねる。 「ああ、さっきのね。応援団になってくれって頼まれた」 桃花は笑顔でVサインをする。 「言われなくても最初からそのつもりだったけど、明日のじゃんけんに勝たないことにはなれないからね。絶対何がなんでも勝ってみせるよ!」 桃花は闘志に満ち溢れる。 応援団長直々に声をかけてもらったからか、負ける気がしない。 'あ、よかった。これなら明日は大丈夫だな' 私たちは同じタイミングで同じことを思った。 ルールを守ろうとする姿勢に、私は桃花のこういうところが本当に好きだな、と改めて思った。
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