体育祭

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「それは、あなたが私たちのしたい演舞に必要不可欠な存在だから。わがまま言っているのはわかってる。でも、私たちにとって最後の体育祭なの。少しも妥協したくないの。お願いします。どうか、応援団に入ってください」 先輩たちは全員頭を下げる。 'うっ……!この雰囲気は断りにくい' 「……わかりました」 私は結構悩んでから了承する。 自分でもちょろいと思うが、情に訴えられると弱いのだ。 「……!」 先輩たちはバッと勢いよく顔を上げる。 口が開いていくのが見え、なんて言おうとしているのかすぐにわかり、慌ててこう付け加える。 「ただし!明日のじゃんけんに勝てたらです。それでいいなら、やります」 こればっかりは譲れない。 応援団をやりたい人は大勢いる。 自分だけズルをするわけにはいかない。 なにより、そんなことをすれば桃花の顔を見れなくなる。 「……わかった。それでいいわ」 納得した、とは言いがたい表情だったが、嫌と言えば応援団に入る可能性がゼロになると思い仕方なく了承する。 「ありがとうございます。それじゃあ、話しはもう終わりましたよね。もう帰ってもいいですか?」 早く帰らないと本気で怒られるため、話を終わらせて帰りたい。 「ええ……」 「ありがとうございます。それじゃあ、失礼します」 私は許可が出るなり、そう言いながら頭を下げ、言い終わると全力疾走で家へと向かう。 「絶対勝って……ね」 最後まで言い終わる前に私が帰り、先輩たちはあまりの速さに「えー」と驚きを隠せなかった。
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