体育祭

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「ん?ああ、今からのはね、多分だけど体育館が終わったあとに後夜祭があるじゃん。そのとき、一番最後に一部の応援団がアイドルみたいな衣装でステージに立ったの覚えてる?」 「あ、うん。覚えてるよ。すごく格好よかったし。でも、それがどうしたの?」 去年の体育祭で曲に合わせて踊るのを思い出す。 そこにいた全員が応援団と同じ振り付けをして踊った。 もちろん、一緒になって踊った。 「そのとき、ステージに立っていた人数覚えてる?」 「確か……10人じゃなかった?」 「うん。そう、10人。今からするのは……」 「まさか……!」 ここまでくれば桃花が次に何を言うか予想できた。 「そう。そのまさかよ。今からその10人を選ぶの」 桃花は興奮気味に言う。 「え、でも、そういうのって3年生がやるんじゃ?」 「私も去年同じこと思った。けど、そんな決まりはないみたい。現に去年、菖蒲先輩ステージに立ってたし」 「え?」 「もしかして覚えてないの?」 「……うん」 記憶にない。 楽しかったのは覚えているが、誰が立ったかは覚えていない。 というより顔を見れなかった。 なぜ体育祭のあとの後夜祭で応援団が一番最後に踊るのか、その成り立ちを知っていたので、顔を見たらそのことを思い出して楽しめなくなるので敢えて見ていなかった。 「まぁ、私たち後ろの方にいたし。顔が見えなかくても仕方ないか」 桃花は私がバツの悪い顔をしていたから、勘違いしたのかそう言う。 少し居た堪れなくて話を変えようと「ステージに立つ10人ってどうやって決めるの?」と聞こうとしたら、そのとき4時間目が始めるチャイムの音が鳴った。
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