裏切り

12/29
前へ
/124ページ
次へ
暫くして落ち着くと藤堂に「ごめん」と言って離れる。 「……いや」 藤堂は気まずそうな顔する。 それも仕方ない。 自分と仲の良い友達が浮気している現場をその彼女と見てしまったのだから。 「藤堂くん。悪いんだけどさ、もう少しここにいてくれない」 「ああ、それは別に構わないけど……」 藤堂の許可を得ると私はスマホをスカートから取り出し秋夜にラインをする。 『ごめん。まだかかりそう。今日のデートは無しでお願い』 と、簡潔に送る。 するとすぐに秋夜から返信がきて『わかった。頑張れよ』と。 いつもなら喜ぶのに、今日は腹がたった。 これから茜とデートでもするのだと想像するだけで頭がおかしくなりそうだった。 二人のデートを想像していたそのとき、着信音が鳴った。 秋夜から?と思い体がビクッと揺られる。 スマホを確認するも真っ暗ですぐに藤堂のスマホが鳴ったのだと気づく。 ホッとしたのも束の間、たまたま見えた藤堂のスマホ画面には秋夜の文字があった。 藤堂は少し躊躇ってから通話ボタンを押した。 彼のスマホから秋夜の声が聞こえた。 『蓮。図書委員の仕事あとどれくらいで終わるんだ?』 「……なんで?今日遊ぶ約束してないだろ」 『まぁ、そうなんだけど。なんとなく気になってな……』 その言葉で私は秋夜が何故藤堂に電話してきたのか気づいた。 終わる時間帯で茜とデートができるか考えているのだと。 ふざけんな! 今すぐ1組に戻って秋夜をボコボコに殴り倒したくなる。 「まだ結構かかるよ」 『ああ、そうなんか。大変だろうけど頑張れよな』 最後の「頑張れ」と言ったとき声が弾んでいて嬉しいなが隠しきれてない。 本当にこんな男と付き合っていたのが恥ずかしくなった。 浮気現場を見てから、秋夜にたいする想いは全て涙として流れていった。 もう好きでもなんでもない。 未練なんて少しもない。 別れよう。 そう決めた。 本当は今すぐにそう言いたかったが、怒りのあまり顔を見た瞬間殴ってしまいそうで気持ちを落ち着かせてから言う必要がある。 明日言おう。 そして二度と関わらない。 そんなことを考えていると電話を終えた藤堂が申し訳なさそうな顔をしてこっちを見ていた。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加