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「ごめん。放送のせいでなんて言ってるのか聞こえなかった。今ななんて言ったの?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「そう?ならいいけど。そろそろ帰ろうか?二人ももういないだろうし。ごめんね。こんな時間まで付き合わせて」
「気にしなくていい。俺も好きでいたから」
「ありがとう。本当に優しいね。あんな場面見たあとに一人でいたらきっと頭がおかしくなってたよ。こんなこと言うのもおかしいけど、私男子が苦手だったから、藤堂くんのおかげで少し払拭されたよ」
小学生から男子に悪口を言われたせいで苦手意識があったが、今日のことで少し自分の中で何かが変わった。
「苦手だったのか?」
それなのに秋夜とはどうやって仲良くなって付き合ったんだと不思議に思う。
「うん。変かな?この歳になって、まともに男子と話したことないって」
普通に生活をしていたら男子と関わるのはおかしくない。
当たり前のことだ。
本当はわかってる。
自分がおかしいことくらい。
でも、あの頃に傷つけられた心はそう簡単に癒やされず、今日まで関わるのを避けていた。
「別に。桜庭はがそれで問題ないならいいんじゃね?」
「……そっか。それもそうだね」
絶対おかしいと言われると思って身構えていたのに、まさかの発言に驚いて一瞬固まってしまう。
「桜庭が嫌じゃなければ理由聞いてもいいか?あ、いや、興味本位とかじゃなくて、もし知らないうちに傷つけたら嫌だと思ってさ……」
藤堂は自分が何を言ってるのかわからなくなり混乱して早口で言う。
そんな彼の様子がおかしくてついフフッと笑ってしまう。
男子の中でも特に苦手だと思っていたのに、何故か今は可愛いとすら思った。
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