110人が本棚に入れています
本棚に追加
「小学生のときからね『凶暴女』『メスゴリラ』『怪力女』『女のくせに男より強いなんて可愛くない』ってこと言われたの。私は空手が好きだから、強くなりたいから、毎日修練したの。高校生になるまでそれは続いたわ。もちろん毎日じゃなかったけど、ちょっとしたことでそう言われたの。そのせいで男子が苦手っていうか、はっきり言うと嫌いだったの。しょうもない理由でごめんね」
私は最後の言葉を言うとき、何故か急に恥ずかしくなって誤魔化すように階段を降りた。
「しょもないなんてことねぇよ。桜庭にとってその言葉は嫌だったんだろ」
藤堂はその男子達が彼女の気を引きたくてそうしたのだとすぐにわかった。
彼女の顔は今まで見てきた人の中で1番綺麗だ。
笑うと年相応になるが、ただそこにいるだけで圧倒されるような顔だ。
近づくのには勇気がいる。
だから、貶すことで関心をひきたかったのだと思った。
結果、そのせいで彼女の心を深く傷つけるとも知らずに。
'ムカつく'
藤堂は何故自分がそう思ったのかわからず動揺する。
心臓の辺りが少し痛くなり病気かと手で抑えるも痛くはない。
気のせいだと思い忘れることにした。
「ありがとう。やっぱり藤堂くんは優しいね」
私はどうしてこんなにも優しい人を苦手だと感じていたのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!