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「ここで大丈夫。私の家あそこだから」
家を指差す。
今いるのは公園。
「わかった」
「ありがとう。じゃあね」
私はその場から離れようとしたが、藤堂に話しかけられて足を止める。
「あのさ……!」
藤堂はそう言ったが、その続きを言おうとはしなかった。
正確には言おうとしてやめた。
言っていいのか迷って。
これを聞いたら、また傷つけるかもしれない。
そう思うと怖くて続きが言えなかった。
「大丈夫。本当にもう大丈夫よ」
私は藤堂が何を言いたいのかわかり、笑顔で彼が知りたかったことを答える。
「もう未練もないわ。明日別れるつもりよ。だから、もう大丈夫よ。それとごめんね」
「なんで桜庭が謝るんだ?」
急に謝罪されて困惑する。
その謝罪の意味がわからなくて。
「藤堂くんはあの二人と仲が良いでしょう。私はあの二人とはもう縁を切るつもりだからなんともないけど、でも藤堂くんはこれからもあの二人と遊んだりするでしょう。もしかしたら、私のせいで嫌な気持ちにさせたかと思って」
私は裏切られたから二人と縁を切るつもりだけど、彼は違う。
裏切られたわけじゃない。
これからも仲の良い友達として過ごせる。
実際、友達が浮気してても仲良くする人は大勢いる。
傷ついている人がいるとわかっているはずなのに「格好いい」「やるじゃん」と褒める人達もいる。
でも、きっと私のせいで微妙は立場になった。
あのとき私と一緒にいたせいで関係ないのに巻き込まれた。
友達の嫌なところを見た。
見なければ、知らなければ、今まで通り過ごせたのに。
それもできなくなった。
それがどうしよもなく申し訳なかった。
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