大会

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「あのクソヤロー。ぶっ殺してやる」 桃花が言うと楓もそれに同意した。 「私も手伝うわ」 「二人共落ち着いて」 芹那がパンと手を叩く。 私はその言葉を聞いて「芹那。やっぱり二人を止められるのはあなただけよ。ありがとう」と心の中で礼を言う。 芹那が言わなければ私が言っていた。 冗談抜きで本当に殺しそうな勢だったので止めてくれて助かった。 そう思ったのも束の間、続きの言葉を聞いて私は「え……?」と間抜けな声を出して芹那を見る。 「死なんて生ぬるいわ。地獄を味あわせないと。とりあえず、男としての人生を終わらしましょう」 芹那は笑顔で毒を吐く。 'まずい。非常にまずい。秋夜の男の人生が終わるのは別にいいが、三人が私のせいで一線を越えるなんてことになるのは駄目だ。何とかして辞めさせないと' このままでは自分のせいで三人が一戦を超えると思い焦る。 「三人とも落ち着いて。気持ちは有難いけど、私はもうあいつに関わるのは嫌なの。例え、私のために三人が文句を言いにいくってだけでもね。私のために怒ってくれただけで充分だよ。ありがとう」 「……わかったよ。私達もあのクズとは関わらないようにするよ。二人もそれでいいよね」 本当は秋夜をボコボコにしたかったが、自分達は当事者ではない。 巴が関わりたくないというなら、その気持ちを尊重する。 無理矢理そう自分に言い聞かせ、秋夜をボコる計画は諦める。 'チッ。運のいいやつめ。巴の優しさに感謝しやがれ。クズヤロー!' 桃花は心の中で秋夜を罵倒する。 私は桃花の言葉を聞いてホッとし、無意識に息を吐いた。 'よかった。これで三人の経歴に傷はつかないわ。でも、あのクソヤローには罰が当たりますように' 秋夜を助けるために止めたわけではないので、本心では男としての人生が何らかの形で終わることを願っていた。
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