大会

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私が決勝戦までいくことはこの会場にいる全員が予想していたので、そのことには驚いていなかったが、試合内容がいつもと違いあっという間に終わるのでそのことに驚きを隠せていなかった。 決勝戦の相手は前回と同じだ。 とういうより、ここ数年決勝の組み合わせは変わらない。 桐瀬彩花(きりせあやか)。 私のライバルと言われている。 「今日は絶対私が勝つわ」 試合が始まる前に桐瀬にそう言われた。 相当自信があるのか、いつになく強気な態度だった。 いつもなら「私も負けるつもりはないよ」と返していたが、木曜日のあの出来事のせいで他人に気遣う余裕などなかった。 今までの相手は弱過ぎて怒りをぶつけることはできなかった。 桐瀬なら少しくらい大丈夫だろうと思い、その怒りをぶつけて試合ができると思いこう言った。 「悪いけど。今回だけは絶対に負けることはないわ」 桐瀬はいつもと違う私の返しに驚いてほんの一瞬固まったが、すぐに我に返り「ハッ。その言い方だと今まで本気で私と戦ったことはないみたいな言い方ね」と吐き捨てるように言う。 「そんなことはないわ。ただ、今回は絶対に負けられない理由があるだけ。ただ、それだけよ」 私はそう言うと桐瀬の返事も聞かずにその場から離れる。 私は後ろを振り返ることをしなかったので、今の言葉がどれだけ桐瀬を傷つけ怒らせたのか気づかなかった。 鬼の形相で私を睨んでいたことなど知る由もなかった。
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