裏切り

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体力テストからあっという間に時間が経ち木曜日になった。 今日は図書委員の中で昼休みにじゃんけんに負けた四人が代表として掃除をすることになった。 私は見事に負け、掃除係になった。 いつもならじゃんけんしなくても立候補したが、今日は秋夜と放課後デートする予定だったので気分は最悪だ。 さっさと終わらせて帰ろうと思ったのに、何故か本の整理までしないといけなくなった。 ある程度は先生がやってくれていたみたいだが、四人でやるにはきつい量だ。 私は泣きたくなるのを我慢して作業する手を早める。 少しでも早く終わらせてデートの時間を長く確保するために。 そのとき、後輩の女の子が重い段ボールを運んでいるのが目に入った。 今にも倒れそうな様子に慌てて駆け寄る。 「大丈夫?」 「巴先輩」 「私が運ぶよ。貸して」 「あ、いえ。私が運びます」 後輩の女の子は申し訳なくてそう言ったが、腕は限界でプルプルと震えていた。 「実は私細かい作業は苦手なの。だから代わってくれると嬉しいんだ」 後輩は私が細かい作業を淡々とこなしているのを見ていたので嘘だとすぐに見抜いたが、自分が負担に思わないようそう言っているのだと知り、その気遣いに感謝する。 「ありがとうございます」 「気にしないで。お互いさまじゃん」 私は後輩からダンボールを受け取り、図書室から出て、三つ隣の部屋へと運ぶ。 「お、桜庭が持ってきて……って、それ物凄く本が入って重くないのか?」 教室に入りダンボールを置くと先生が心配そうに尋ねる。 「大丈夫です。こう見えて私は力持ちなんですよ」 力こぶを作ってみせるも、ブレザーのせいで筋肉は見えない。 「そうか。桜庭は頼りになるな」 「でしょう。残りも運びますね」 「ああ。頼んだぞ」 そう言われ教室を出ようとしたら誰かにぶつかった。 「あ、すみません」 ぶつかった人に謝る。 誰かと思い後ろを向くとそこにいたのは茜と秋夜と同じグループで学校のモテ男ランキングトップ3に入る藤堂蓮(とうどうれん)だった。
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