体育祭

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「楓。元気出して」 私は励まそうと声をかけるも、楓は魂が抜けたみたいに間抜け面をしたまま微動だにしない。 「明後日、係決めをするから各自やりたいものを決めておくように」 先生は教室から出る前にそう言う。 明後日の3、4時間目に学年集会がある。 その時に決めるのだ。 「巴はなにするか決めてるの?」 桃花が肩に手を置きながら聞く 「うーん。まだ悩み中かな。桃花は今年も応援団?」 去年の桃花のかっこいい姿を思い出し今年もやってほしいと思う。 「うん。でも、じゃんけんに勝てればだけどね」 応援団は毎年、ダンスと同じくらい人気でその座を巡ってじゃんけんをする。 去年、凄かったもんな、と思いながら頑張ってねと応援する。 「芹那はなにをするか決めた?」 桃花が尋ねる。 いまだに楓は自分の世界に入ったままで現実に戻ってきていない。 「私は今年もダンスがいいけど……人気だからね」 「だね」 二人とも人気の係を選ぶな、と尊敬しながらあまり違う学年と関わらない係がいいから去年と同じものにしようかと決めていたんだが…… なぜ、この男は私に大してものすごい恐ろしいことを言っているのだろうか!
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