体育祭

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時は少し遡り、昼休み。 今日は久しぶりに全員弁当なので教室でご飯を食べた。 最近、誰かが弁当無しだったので学食で食べることが多かった。 机をくっつけてご飯を食べていると、急に黄色い歓声が聞こえてきた。 「なんか、嫌な予感がするな……」 桃花がボソッと呟く。 「それにしてもすごい歓声だね」 私はなかなか鳴り止まない歓声に驚嘆する。 「なんか……だんだん近づいできてない?」 声が大きくなっているのを芹那は不審に思う。 「まぁ、私らには関係ないでしょ」 私は残りのご飯を口に運ぶ。 「だね」 桃花がそう返事をし、また話しの続きをしながらご飯を食べていると「あ、いた」と男の声が教室に響いた。 私たちは声のした方にゆっくりと視線を向けると、そこには3年生の菖蒲紅(あやめこう)がいた。 私たちは菖蒲を認識した瞬間、あの歓声はこの男に向けたものかとすぐにわかった。 菖蒲は藤堂と薺と同じモテ男トップ3のメンバーだ。 'なんで3年生がここに?それも女クラに?' 私は不思議に思いながらも、知り合いの後輩に会いにきたのだろうと深く考えずに視線を弁当に戻す。 その間に菖蒲は2-7の教室に入る。 「桜庭巴」 「え……?あ、はい」 自分の名を呼ばれ目をパチパチする。 まさか菖蒲に名を呼ばれるとは思ってなかった。 いや、それよりも自分にようがあってここまできたことに驚きを隠せなかった。 私はゴクンッと唾を飲み込む。 菖蒲の真剣な目に何も言えなくなる。 何を言おうとしているかはわからないが、なぜか胸騒ぎがする。
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