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真実は南から
北大路 南の朝は早い。
喫茶店を経営しているお父さんを叩き起こし、朝食を用意してあげなければならないからだ。
目を離すと二度寝してしまう事だってあって、これまでどうやって仕事を続けてきたのか疑ってしまう。
お父さんが「いつもありがとう」と言ってくれるので、嫌々ながらもあたしの中でそれが毎朝のルーティンと化していた。
けれど、そんな寝坊助なお父さんを起こしてあげられるのも今年で最後だ。
来年からは慣れ親しんだ地を離れ、家元から出て一人暮らしをしながら都内の大学に通う事が決まっていた。
お父さんはあたしの心配を口にしていたが、あたしからすれば朝も起きれないお父さんの方が心配だった。
「それならさ、目覚まし時計とか買ってあげれば良いじゃん」
「えー。もうすぐ誕生日だしそれも悪くないかもだけど」
そんな心配事を近くのカフェ『エトワール』で苺のパンケーキを食べながら友達の美香に相談していた時の事だった。
私はどうせプレゼントするならと、ある計画を考えつく。
絶対に起きれるという謳い文句の目覚まし時計を、お父さんにプレゼントしようという計画だ。
それならばサプライズでお店に送って驚かせてみようと話しは盛り上がり、さっそく実行する事にした。
可愛いく仕立てた箱を用意して『あたしが居なくなっても寝坊しないようにね!」と書いた手紙を入れて。
送り主の住所でバレてはいけないと『エトワール』の住所を借りてお父さんのお店『メトロノーム』へと送る事にした。
正午に配達時間の指定をして、ちょうど目覚まし時計が鳴る様にセットし送ったのだ。
今頃はお父さんも驚いて腰を抜かしているに違いない。
普段は寡黙なお父さんのそんな姿を家でお菓子を作りながら想像していると、美香からのメッセージに気がついた。
「南のお父さんがやってる喫茶店の近くで爆破予告があったんだって」
なんだか物騒だなと思いながら「もしかしたらあたしの時計が爆発しちゃってるかもね」とだけ返信をした。
私はエトワールのパンケーキの味を思い出しながらお菓子作りに戻り、楽しみにお父さんの帰りを待つ事にした。
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