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時が止まってしまったかの様に店内は静まり返る。
それもそうだ。こんな事を急に言われて信じる人間はいない。
「急に大声を出してすみません。僕は東条と申します。警察官をしています」
予め用意していた警察手帳を出し、なるべく混乱させないように落ち着き払って名乗りをあげた。
まずは事実を伝えるべきだろう。青白い表情のマスターや客達を視界に収めて向き直った。
「パニックにならず聞いてください。実はこのお店に爆破予告の通報がありました。信じられないかも知れませんが事実なんです!どうか慌てず、念のためにお店から退避して下さい。僕が中身を確認しますので」
いまだに状況が掴めないのか、ポカンとしたままの客やマスター達を他所目に、僕はカウンターに取り残された箱へと近付いた。
一見何の変哲もない箱に見えるが、それが余計に怪しさを醸し出している。
息の詰まる様な緊張感と共に、箱に手をかけた。
「待って!その箱は私のものです!爆弾なんかじゃありません!」
バンという大きな音と共に、背後から女性の声がする。
振り返ると、血相を変えた先客の女性が立ち上がっていた。
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